感染症対策はどこまで必要? 正しい知識を持つことが、安心で快適な暮らしを守ります。

新型コロナウイルスのみならず、ノロウイルスやインフルエンザウイルスなど、私たちの身の回りにはさまざまな病原体が存在しています。治療薬やワクチンが準備されているものもありますが、まずは感染しないために、身の回りでできる対策が大切。
そのためにも、感染症に対する正しい知識を身につけましょう。
今回は、ウイルスや細菌などの病原体の特徴・感染経路、除菌や消毒についてご紹介します。
CONTENTS
そもそも感染経路にはどのような種類があるのでしょうか
ウイルスや細菌は、何らかの経路をたどって体内に侵入しますが、どのように感染していくかは病原体によって異なります。この感染経路を絶つことが、感染症予防には必須となります。
では感染経路にはどんなものがあるのでしょうか。代表的な感染経路と病原体を紹介します。
感染症の主な感染経路と仕組み
「感染症」といっても、病原体によって感染経路は異なります。どのような場面で、どのような対策をとればいいのかをよく知ることが大切です。
飛沫感染 | 感染している人がくしゃみや咳をすることによりウイルスや細菌が飛沫となって飛び出し、それを吸い込んだ人に感染させること。至近距離で飛沫を浴びた場合、ウイルスが目の粘膜や気道に入ることで感染します。 |
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→百日せき、風しん、インフルエンザ、おたふくかぜ(流行性耳下腺炎) 等 | |
空気感染 | ウイルスや細菌が空気中を漂い、それを吸い込むことで感染すること。咳やくしゃみなどの飛沫から水分が蒸発した状態の「飛沫核」が長時間空気中を浮遊することで感染が拡大します。 |
→麻しん(はしか)、水痘(水ぼうそう)、結核 等 | |
接触感染 | ウイルスや細菌に汚染された唾液や体液に直接接触したり、汚染された手で触った手すりやタオル、ドアノブなどを触ることにより、病原体が付着し感染すること。 |
→咽頭結膜熱(プール熱)、インフルエンザ 等 | |
経口感染
(糞口感染) |
ウイルスや細菌に汚染された食品を、生または十分に加熱せずに食べることで感染すること。汚染された食品やそれに触れた手や包丁・まな板などから加熱調理しない食材が汚染される例、感染した調理者が十分に手洗いを行わず調理することで感染する場合がある。また感染者の世話をする場合、患者の吐物・便などから手指を介して経口摂取される場合を特に糞口感染といいます。 |
→感染性胃腸炎(ロタウイルス)、感染性胃腸炎(ノロウイルス) 等 | |
媒介感染 | 病原体を含むノミやダニ、蚊などの昆虫に刺されることによって感染すること。 |
マラリア、デング熱、ライム病、ペストなど |
多くの病原体は汚染された手で口や目、鼻を触ることで体内に侵入するため、手指の消毒は特に重要だと言えます。
ソーシャルディスタンスについて
すっかり定着してきた「ソーシャルディスタンス・三密(密接・密集・密閉)回避」ですが、日本では2メートルの距離をとることが推奨されています。では、なぜこの距離が必要なのでしょうか。
これは感染者の会話や咳、くしゃみから拡散する飛沫を避けるため。ウイルスや細菌は咳、くしゃみ、会話などで発生する飛沫の中に含まれて空気中に出ます。大きな飛沫は遠くまで飛ばず、床に落ちるため、距離が離れていれば飛沫感染リスクを低減できるのです。
飛沫防止のためにマスクをする、というのが基本ですが、ソーシャルディスタンスが十分に確保できていれば、マスクは必要ないと言えます。気温の高い夏の時期などは、熱中症を避けるためにソーシャルディスタンスを確保した上で、適宜マスクを外すことも考えましょう。
新型コロナウイルス、「空気感染」の可能性は低い
新型コロナウイルスについては多くの情報が発信されていますが、なかでも「空気感染」については特にちょっと怖くなるようなニュースも耳にします。感染者と同じ空間にいるだけで感染してしまうのでしょうか?
毎日安心して生活していくためにも、ここでは空気感染と検査について解説していきます。
空気感染するのであればもっと感染者は多いはず
基本的に新型コロナウイルスの感染経路は飛沫感染と接触感染です。一部のニュースで空気感染もありうる、と言われていましたが、もしもこのウイルスが空気感染を起こすのであれば、より多くの人が感染しているでしょう。
代表的な空気感染による感染症、はしかの事例をみると、ほんの短い時間に感染者と同じ空間にいただけでもすぐにクラスターが起こっています。そうした他の感染症事例を見ても、今回のウイルスは空気感染ではなく飛沫感染であることは間違いないと思われます。
ただし、条件によっては、小さくなった飛沫がただよい感染を広げることも指摘されています。その事例を次に解説します。
密室での滞留がクラスターを生む
2020年7月に起きたミニシアターでの感染例から、飛沫が多く出ていた場合、その飛沫の滞留が起こることがわかりました。
つまり感染者が大声を出したり、歌ったりすると、ウイルスを含んだ大量の飛沫が放出されることになります。通常1.5メートルで飛沫は落ちますが、密室の場合、大量の飛沫の中でも軽くなったものがそこに充満すると考えられます。ミニシアターやライブハウス、ホストクラブなど換気のしづらい密室でクラスターが起こるのは、そうした理由からだと考えられます。
ウイルスを出す可能性のある人、人前で声を出す人はマスクが欠かせません。
「無症状感染者」からの感染? PCR検査と抗体検査
無症状感染者からの感染拡大、これもちょっと怖い情報です。
「もしかしたら自分も無症状だけれど感染しているかもしれない…」そう考える方もいらっしゃるのではないでしょうか。無症状感染者の実態と、PCR検査・抗体検査について説明します。
無症状感染者からの感染リスクは断言できない
無症状感染者からも感染するという研究論文が出ていますが、多くの場合、それらは実際に調査したものではなく「推計」に基づいた統計です。統計学はロジックによってさまざまな結果が出るため、一概に無症状感染者から感染する可能性は断言できないでしょう。
もちろん無症状でも感染していれば、その体内にウイルスは存在しますが、症状が出ていなければウイルス量は少ないと考えられます。もし人に感染させるほどのウイルスがあれば、元気でも味覚が変だとか、鼻がぐずぐずするとか、ウイルスの量に比例して何らかの症状が出てもおかしくありません。
ただし、症状がない人同士であっても、直接唾液に触れるようなグラスのまわし飲みやお料理のとりわけをすれば感染する可能性は高いため、この点は注意が必要です。
症状がなければどの時点で感染したのかがわからないため、本来は無症状者が排出するウイルス量の研究も必要かもしれません。新型コロナウイルスは発生してまだ1年も経っていないウイルスですから、研究が積み重なって新しい見解が共有できるまでには時間がかかるのです。
では症状がないのに陽性の人がいるのはなぜなのでしょうか。これはPCR検査という遺伝子検査の特性によるものです。
PCR検査の実態と注意
PCR検査は、対象者の鼻や唾液から取り出した検体を装置にかけ、ウイルスの遺伝子を増幅して検出するものです。つまり理論上ウイルスが一個、またはウイルスの遺伝子のかけらが存在すれば、陽性として検出してしまいます。そのため、感染力のない無症状感染者であっても、「新型コロナウイルス感染者」に包括され報じられてしまう。
この考え方には注意が必要ですが、もちろん無症状感染者であっても、ウイルス量によっては感染力が高い方もいるため、油断できません。
抗体検査、抗原検査とは? PCR検査との違い
PCR検査の他にも、感染症の検査には抗体検査、抗原検査があります。
抗原検査は、PCRと同様に鼻から採取した検体で調べますが、こちらはウイルス表面のタンパク質を検出します。検査に対する所要時間も短く、労力もかかりませんが、検出するにはより多くのウイルスが必要であり、PCRより感度が低い検査です。
抗体検査は、その人が感染することによって体内に作られた血液中の抗体の有無を調べるものです。つまりその時にウイルスが存在するかではなく、過去に感染したことがあるかどうかを調べる検査です。抗体は感染後2〜3週間経たないと作られないため、検査の直前に感染していても「陰性」となります。ミニシアターでクラスターが起こった例では、出演者に具合が悪い人がいても決行してしまったのがこの原因でした。
出演した理由は抗体検査の結果が陰性だったから。繰り返しになりますが抗体検査では「今」その人にウイルスがあるかどうかはわかりません。それを陰性だったからと出演をしたためにクラスターが起きました。人の理解はまちまちで、都合のいいようにとらえてしまいます。このような誤解をしないためにも、検査の種類について知っておく必要があるでしょう。
過剰に防御するのではなく、本質的な対策が重要
マスクや手洗い、消毒は私たちができる基本の予防法です。しかし、中には過剰なものもあるようです。
例えばスーパーマーケットなどでは、入口に消毒薬が設置され、レジはビニールシートで覆われ、マスクと手袋、フェイスシールドをした店員さんがコイントレーを介してお金をやりとりしているような場面を目にします。これらはすべて必要なのでしょうか。
本当に必要なことは、不特定多数の人たちがいるところに行ったあとに、必ず手指消毒をすることです。
手洗いの重要性
新型コロナウイルスはエンベロープをもつウイルスのため、石けんで手洗いすればエンベロープが壊れて死んでしまいます。スーパーや百貨店には消毒液が設置してありますが、これは石けんで手洗いできない場面で、石けんの代わりに置いてあるものです。
流行地ではさまざまなところにウイルスがくっついている可能性があるため、正しく適切なポイントで手指衛生を徹底することが必要です。お店に入る時は消毒していても、出る時に消毒をしていますか? 不特定多数の人が触った商品、手すりやエレベータのボタンなどを触っていれば、やはり手洗いをするべきでしょう。
家に帰った時は、絶対に手指消毒をしてください。ウイルスが付いているかもしれない手で家の中を触らないよう、帰宅したらまず玄関で一度消毒をするか、洗面所までのドアを開けておく、もしくは肘で開ける。どこにも触らずに洗面所までいけるよう感染経路の対策ができていれば玄関で消毒しなくても大丈夫です。過剰になんでもやろうとすると肝心なことがおろそかになってしまいます。
正しいアルコール消毒の仕方
接触感染経路を断つためにアルコール消毒が必要ですが、少しのアルコールで手をこすって終わり、では除菌できません。
アルコールは乾いた状態の手に3ミリリットルを使ってまんべんなく手に塗るようにしましょう。3ミリリットルの目安はポンプを一番下まできっちり押して出てくる量です。やってみると意外と多く感じますが、この量を乾くまでの間にまんべんなく隅々まで塗ることで、手指全体の除菌ができます。
また水に濡れた手でアルコール消毒しても、濃度が下がってしまい十分な消毒はできません。机やドアノブなどの表面を消毒するときの基本は拭き取りです。噴霧した消毒薬は点となってものの表面に付くため、それだけでは除菌漏れが起こることがあります。
マスクは症状が出ている人がするもの
本来、マスクは症状が出ている人がするものです。症状のない人が感染を防ぐためにマスクをしてもウイルスは通過するため、「ウイルスを防御する」ことに対してはほとんど意味がないでしょう。
感染経路について、よく整理して考えてみれば、感染している可能性のある人がマスクをすれば防げることがわかります。とにかく少しでも症状があったらマスクをするか、外出を控えること。症状がある人が出歩かず、ソーシャルディスタンスをきちんと守られているなら、マスクはなくても大丈夫なはずです。夏の暑い日に無理をしてマスクをし続け、熱中症になってしまう、ということは避けたいもの。その時の環境や体調に応じて考えましょう。
消毒薬の特徴と使い方、注目の「クロラス酸」とは?
消毒薬にはさまざまなものがありますが、一番使いやすいのはアルコールです。ただしアルコールは宗教的に使えない人もいますし、アレルギーの人もいます。次亜塩素酸については「水」なのか「ナトリウム」なのかを知る必要があります。次亜塩素酸ナトリウムはドアノブや便座などの環境にも使えますが金属腐食性がありますので注意が必要です。また手指の消毒には使えません。
次亜塩素酸水はさまざまなものが発売されていますが、製法によって効果が検証されていないものもあり、保管方法によって効き目が変わってしまう場合もあります。また、汚れなど有機物があると効果が下がってしまいます。
そこで、現在アルコールと次亜塩素酸に変わる「クロラス酸」が注目されています。クロラス酸は、スプレーで生地に使えるか、プレートに使えるかなどの基本的な検証段階ですが、多くの病原体に対して除菌効果が確認されています。
クロラス酸のいい点は、さまざまな病原体が失活することに加え、汚れなどの有機物に強く、安定性があること。安定性というのは効果が維持される、性質が変わらないということです。次亜塩素酸ナトリウムは作り置きをすると効果が下がりますし、アルコールは消毒したい場所が水で濡れていると効果が下がってしまいます。
消毒薬も、それぞれの特性を知って適切に使うことが大切ですね。
感染症対策、クロラス酸ならバルサン!
新型コロナウイルスのみでなく、ウイルスや細菌による感染症への懸念が全世界的に高まり、大きな社会課題となっています。こうした背景を受けて、2020年8月、レック株式会社が立ち上げたバルサンブランドから「クロラスバリア」シリーズ(全8種)が発売されました。
クロラス酸は、食品添加物殺菌料である亜塩素酸水の主成分であり、ウイルスの除去・除菌や消臭効果に優れた作用を発揮します(新型コロナウイルスへの効果はこちら)。アルコールでは効果のないノロウイルスも失活でき、水で濡れたものや汚れたものも除菌できます。また手指にも優しく、消臭効果もあるので、家庭内で使うにはうってつけの成分と言えます。
感染症の正しい知識を理解した上で、適切な対策を講じ快適な暮らしを守りましょう。